第158回 ベルモントステークス

メディアガイドから読み解く:ベルモントSの歴史と伝統

1. アメリカ三冠の中で最も古い歴史を持つ「Test of Champion」

  • 最古の三冠レース: ベルモントステークスは1867年にジェロームパーク競馬場で創設されました。プリークネスステークス(1873年創設)より6年、ケンタッキーダービー(1875年創設)より8年早く誕生しており、アメリカ三冠レースの中で最も古い歴史を誇ります。
  • 北米で4番目に古いステークス: キーンランド競馬場のフェニックスステークス(1831年〜)、カナダのキングズプレート(1860年〜)、トラヴァーズステークス(1864年〜)に次いで、北米で4番目に古いステークス競走です。2026年で第158回目の開催となります。
  • 「テスト・オブ・ザ・チャンピオン」: 本競走は伝統的に「Test of the Champion(王者の試練)」と呼ばれています。これまでに13頭の偉大な名馬たちが、この舞台で三冠を達成してきました。

2. 開催地と距離の変遷:2026年もサラトガ開催

  • 開催地の移り変わり: 1890年にモリスパーク競馬場へ移り、現在のベルモントパーク競馬場がオープンした1905年からは同地で開催されてきました。
  • サラトガでの異例の開催: ベルモントパーク競馬場の大規模な改修工事に伴い、2024年には史上初めてサラトガ競馬場で開催されました。工事が継続しているため、2026年も引き続きサラトガ競馬場が舞台となります。
  • 施行距離: 第1回(1867年)は1 5/8マイルで行われました。伝統的な1 1/2マイル(約2400m)が定着したのは1927年のことですが、サラトガ競馬場で開催される2026年は1 1/4マイル(約2000m)で施行されます。

3. ベルモントSを彩る伝統とシンボル

  • 勝者に贈られる白いカーネーション: レースを象徴する花は「白いカーネーション」です。コロンビア産の厳選された700本以上のカーネーションを手作業で緑色のベルベットに貼り付けて作られるブランケットは、レース当日に5時間かけて制作されます。
  • オーガスト・ベルモント・メモリアル・カップ: 優勝馬の馬主には、ティファニー社製の純銀製のボウル「オーガスト・ベルモント・メモリアル・カップ」が授与されます。蓋の上には1869年の勝ち馬Fenianの銀のフィギュアが飾られています。
  • 響き渡るニューヨークのテーマ: レース前の馬場入場時には、フランク・シナトラの『Theme from New York, New York』が演奏され、競馬場のボルテージを最高潮に高めます(1997年〜2009年、2011年〜現在)。

4. 記録から見るレースの特性

  • 1番人気馬の信頼度: 過去のレースにおいて、1番人気馬が66勝を挙げており、その勝率は42.03%と堅い決着になる傾向があります。
  • 牝馬とセン馬の記録: ベルモントステークスに出走した牝馬は歴史上24頭のみで、勝ったのはRuthless(1867年)、Tanya(1905年)、Rags to Riches(2007年)の3頭だけです。セン馬の優勝もCreme Fraiche(1985年)とRuler On Ice(2011年)の2頭のみと非常に稀です。
  • 最大着差とレコード: 歴史上最大の着差は、1973年に三冠馬Secretariat(セクレタリアト)が記録した「31馬身差」です。この時に叩き出した2分24秒は、ダート1 1/2マイルの世界レコードとして今も燦然と輝いています。
  • 僅差の激闘: 一方で、ハナ差(Nose)の決着も過去に何度か起きており、近年では1998年のVictory Gallop(Real Quietの三冠を阻止)や2016年のCreatorなどが大接戦を制しています。

2026 ベルモントステークス:出走馬と展開の鍵

1. 展開の鍵とコース形態

2026年のベルモントステークスは、ベルモントパーク競馬場の改修工事に伴い、3年連続でサラトガ競馬場で開催されます。これに伴い、距離も本来の1マイル1/2(約2400m)ではなく、1マイル1/4(約2000m)での施行となります。

サラトガのダート1マイル1/4は、グランドスタンド前からスタートして比較的すぐに最初のコーナーを迎えるため、序盤のポジション取りが非常に重要です。今年はフルゲートに満たない9頭立ての少頭数となりました。18頭立てで激しいハイペースとなったケンタッキーダービーとは異なり、隊列がすんなりと決まりやすく、ペースは落ち着く公算が大きいと現地の専門家は分析しています。

2. メディアが注目する有力馬

  • Renegade(レネゲード / 2-1想定) ケンタッキーダービーで2着に好走し、今回は堂々の1番人気に支持されています。名門トッド・プレッチャー厩舎が管理し、鞍上には名手I.オルティスJr.騎手を迎えます。ダービーの雪辱を果たし、悲願のG1タイトル奪取に燃える大本命です。
  • Golden Tempo(ゴールデンテンポ / 9-2想定) 今年のケンタッキーダービー馬です。プリークネスステークスをパスし、中4週の十分な間隔をあけてこの舞台に直行するローテーションを組みました。ただし、米メディア『SportsLine』の専門家などは「ダービーは後方待機の追い込み馬に完璧な展開だったが、少頭数の今回は差し馬には厳しい展開になる」と警鐘を鳴らしており、評価が分かれる存在となっています。
  • Chief Wallabee(チーフワラビー / 3-1想定) ケンタッキーダービーでは4着に入り、今回はレネゲードに次ぐ対抗格(3-1)の評価を受けています。ビル・モット厩舎とJ.アルバラード騎手のコンビで、上位陣を脅かす存在として有力視されています。
  • Commandment(コマンダメント / 6-1想定) フロリダダービーを制した実績馬です。B.コックス厩舎が送り出す期待の一頭で、名手J.ベラスケス騎手とのコンビで前走からの巻き返しと一発を狙います。

※その他、ピーターパンS(G3)の勝ち馬Growth Equity(12-1想定)など計3頭を送り出し、虎視眈々とタイトルを狙うチャド・ブラウン厩舎の動向にもメディアの熱視線が注がれています。

3. レースのポイント

今年の最大の焦点は、「ダービー馬ゴールデンテンポの強烈な末脚が再び炸裂するか」と「少頭数によるペースダウン」の兼ね合いです。多くの専門家が、9頭立てという枠順によりペースが緩み、前を走るレネゲードなどの先行・好位勢に有利に働くと予想しています。

サラトガの小回りなコース形態を味方につけるのは実績上位の先行勢か、Vitruvian Man(30-1想定)のような大穴の伏兵が波乱を巻き起こすのか。サラトガ開催最後となる今年のベルモントステークスも、非常に難解でスリリングな一戦となることは間違いありません。

2026 ベルモントステークス:出走馬プロフィールと寸評

1. ヴィトルヴィアンマン(Vitruvian Man)

  • 騎手: Antonio Fresu
  • 調教師: Doug O’Neill
  • オッズ: 30-1
  • 【寸評】 前走のサンタアニタダービー(G1)で3着に入り、今回が三冠路線への初参戦となります。実績面では他馬に見劣りするものの、西海岸の名門ダグ・オニール厩舎が送り出す大穴候補として、不気味な存在感を放っています。

2. パワーシフト(Powershift)

  • 騎手: Luis Saez
  • 調教師: Todd Pletcher
  • オッズ: 12-1
  • 【寸評】 デビュー戦でエマージングマーケットの僅差2着に好走し、ケンタッキーダービー当日の未勝利戦を勝ち上がったばかりの上がり馬です。サラトガでの調教では僚馬レネゲードと併せ馬を消化し好タイムをマークしており、トッド・プレッチャー調教師もその素質を高く評価しています。

3. チーフワラビー(Chief Wallabee)

  • 騎手: Junior Alvarado
  • 調教師: Bill Mott
  • オッズ: 3-1
  • 【寸評】 ケンタッキーダービーでは直線で馬群に揉まれながらも4着に健闘しました。昨年のベルモントSを制したビル・モット調教師が手掛けており、サラトガでの調整も順調に消化しています。スタミナ血統と好位から運べる脚質が、今回のコースに合致すると専門家から高く評価されています。

4. レネゲード(Renegade)

  • 騎手: Irad Ortiz Jr.
  • 調教師: Todd Pletcher
  • オッズ: 2-1
  • 【寸評】 アーカンソーダービー(G1)など重賞2勝を挙げ、ケンタッキーダービーでは1番人気に支持された実力馬です。本番では直線で一旦先頭に立つもゴールデンテンポの強襲に屈し2着に敗れました。現役最多のベルモントS 4勝を誇るプレッチャー師と名手I.オルティスJr.騎手のタッグで雪辱を期す、堂々の1番人気です。

5. オチーニョ(Ottinho)

  • 騎手: Dylan Davis
  • 調教師: Chad Brown
  • オッズ: 20-1
  • 【寸評】 地元ニューヨークを拠点とする名将チャド・ブラウン厩舎が送り出す3頭のうちの1頭です。オッズは下位に甘んじているものの、地の利を活かし、D.デイヴィス騎手の手綱さばきで上位進出を狙います。

6. グロースエクイティ(Growth Equity)

  • 騎手: Manuel Franco
  • 調教師: Chad Brown
  • オッズ: 12-1
  • 【寸評】 ピーターパンS(G3)を制してここに駒を進めてきた、チャド・ブラウン厩舎の有力馬です。前走の勢いそのままに、相性の良いマヌエル・フランコ騎手とのコンビでG1の舞台に挑む伏兵陣の一角です。

7. コマンダメント(Commandment)

  • 騎手: John Velazquez
  • 調教師: Brad Cox
  • オッズ: 6-1
  • 【寸評】 ファウンテンオブユースSとフロリダダービー(G1)を連勝してケンタッキーダービーに挑みましたが、道中で揉まれる不利もあり7着に敗退しました。実力は間違いなくトップクラスであり、大ベテランのJ.ベラスケス騎手の手綱でスムーズなレースができれば巻き返しは必至です。

8. エマージングマーケット(Emerging Market)

  • 騎手: Flavien Prat
  • 調教師: Chad Brown
  • オッズ: 6-1
  • 【寸評】 ルイジアナダービー(G2)の勝ち馬で、チャド・ブラウン厩舎が誇るもう一頭の有力候補です。経験豊富なF.プラ騎手を背に、安定したレースぶりで三冠最終戦でのタイトル奪取を狙います。

9. ゴールデンテンポ(Golden Tempo)

  • 騎手: Jose Ortiz
  • 調教師: Cherie DeVaux
  • オッズ: 9-2
  • 【寸評】 今年のケンタッキーダービー馬です。23-1という低評価を覆し、最後方から大外一気でレネゲードを差し切る劇的な勝利を挙げ、シェリー・デヴォー調教師に女性初のダービー制覇をもたらしました。プリークネスSをパスして十分な休養をとり、万全の態勢で二冠目を狙います。

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