メディアガイドから読み解く:プリークネス・ステークスの歴史と伝統
米国競馬の三冠競走第2戦として知られるプリークネス・ステークスは、単なる競馬のレースにとどまらず、アメリカのスポーツ史における重要な文化遺産です 。2026年版メディアガイドから、その名前の由来から開催地の変遷、そして今日まで受け継がれる独自の伝統の数々の記載がありましたので記しておきます。
1. 「プリークネス」の起源とレースの誕生
この象徴的なレース名の起源は、ニュージャージー州北部の先住民ミニシ族の言葉で「ウズラの森」を意味する「Pra-qua-les」に遡ります 。ジョージ・ワシントン将軍がこの地域を「Preckiness」と呼んだこともあり、後に馬主であるミルトン・H・サンフォードが自身の農場名として採用しました 。
レース創設のきっかけは1868年、サラトガのホテルで開かれたディナーパーティーでのことです 。メリーランド州のオーデン・ボウイ知事らが新競馬場の建設と高額賞金レースを企画し、1870年のピムリコ競馬場開場日に第1回「ディナーパーティー・ステークス」が開催されました 。このレースを制したのがサンフォードの所有馬「プリークネス」であり、1873年に創設された3歳馬のクラシック競走は、この初代王者の名を冠して「プリークネス・ステークス」と名付けられました 。なお、1873年の第1回大会の勝馬はサバイバー(Survivor)です 。
2. 開催地の変遷と「失われた時代」
プリークネス・ステークス=ピムリコ競馬場というイメージが強いですが、その歴史の中で開催地は何度か変更されています。
- ニューヨーク開催期: 競馬界の変動により、1890年はニューヨークのモリスパークで、1894年から1908年まではブルックリンのグレーブセンド競馬場で開催されました 。
- 失われたプリークネス: このニューヨーク開催時代は「失われたプリークネス(lost Preaknesses)」と呼ばれていましたが、1948年に公式なレースの歴史として正式に編入されました 。
- 2026年の歴史的移転: ピムリコ競馬場の大規模な再建工事に伴い、2026年の第151回大会は史上初めてローレルパーク競馬場へと舞台を移して開催されます 。
3. 色褪せない独自の伝統
メディアガイドには、プリークネスを特徴づける数々の美しい伝統が記されています。
- 米国で最も高価なスポーツトロフィー: 優勝馬に贈られる「ウッドローンベース(Woodlawn Vase)」は1860年にティファニー社によって制作されたもので、1983年時点での評価額は100万ドル(現在の価値で約325万ドル)に上ります 。南北戦争時には弾丸として溶かされるのを防ぐために地中に埋められて隠されたという逸話を持ち、1917年からプリークネスのトロフィーとして採用されました 。
- ブラックアイドスーザンのブランケット: 1940年の優勝馬バイメレックの時から、メリーランド州の州花であるブラックアイドスーザンのブランケットを勝馬に掛ける伝統が始まりました 。実際には開花時期が合わないため、約4,000輪の菊(Viking Poms)の中心を黒く塗って本物に見立てており、4人がかりで8時間かけて手作りされます 。
2026年プレビュー
1. 展開の鍵とコース形態
ローレルパークは1周約1マイル1/8のコースであり、従来のピムリコよりもスタート地点から最初のコーナーまでの距離が短くなります。そのため、内枠の優位性が高く、外枠の馬は序盤で外を回されるリスクがあります。
展開を牽引するのは、絶好の最内1番枠を引き当てた地元ローレルで無敗のTaj Mahal(タージマハル)、あるいは外枠10番からテンのスピードに定評があるNapoleon Solo(ナポレオンソロ)と予想されている。他にも前に行きたい馬が多く、ペースは速くなる公算が大きいとされています。
2. メディアが注目する有力馬
- Iron Honor(アイアンオナー / 9-2想定) ダービー馬不在の中、押し出される形で1番人気に支持されたのが名将チャド・ブラウン厩舎のこの馬。前走ウッドメモリアルS(7着)の大敗についてブラウン師自身も1番人気に驚きつつも、「馬の状態はこの上なく、この舞台は合っている」と自信を覗かせる。名手F.プラ騎手とのコンビで巻き返しを狙う。
- Taj Mahal(タージマハル / 5-1想定) 「地の利」を高く評価されている一頭。専門家も「コースを経験している唯一の馬であり、最内枠からロスなく運べるアドバンテージは計り知れない」と、無敗でのG1制覇に熱視線を送る。
- Incredibolt(インクレディボルト / 5-1想定) ダービーで6着に健闘し、状態の良さから急遽参戦を決めた実力馬。12番という外枠に入ったため、序盤にいかに脚を溜められるかが鍵。展開が向いた時の破壊力は最上位クラスと目される。
- Ocelli(オセリ / 6-1想定) 未勝利馬ながらダービーで単勝70倍の大穴をあけて3着に激走。『NBC Sports』のアナリストは「前が崩れるハイペースの展開になれば、持ち前の強烈な末脚が再び通用する」と警戒を強めている。
3. レースのポイント
圧倒的な中心馬が不在の今年は、コース適性、枠順の利、そしてペース配分が勝敗を分けるポイントになる。前残りを狙うタージマハルか、実績上位のアイアンオナーか、それとも展開を味方につけたインクレディボルトやオセリの強襲か。非常に難解だがスリリングな一戦となることは間違いなさそうです。
出走予定馬一覧&寸評
1. タージマハル(Taj Mahal)
- 騎手: Sheldon Russell
- 調教師: Brittney Russell
- オッズ: 5-1
- 【寸評】 地元ローレルパークで3戦無敗。前走テシオSを8馬身余の大差で圧勝した「地の利」は最大。今回は一気に相手が強化されるが、唯一のコース経験馬として無敗での戴冠に挑む。
2. オセリ(Ocelli)
- 騎手: Tyler Gaffalione
- 調教師: Whitworth Beckman
- オッズ: 6-1
- 【寸評】 未勝利の身ながらケンタッキーダービーで70倍の低評価を覆し3着。ウッドメモリアルSでも激走した波乱の主役。展開に左右されるが、強烈な末脚はここでも脅威。
3. クラッパー(Crupper)
- 騎手: Junior Alvarado
- 調教師: Donnie Von Hemel
- オッズ: 30-1
- 【寸評】 オークローンでキャリアを積んだ叩き上げ。優先出走権を得たバスハウスロウSの勝馬。父キャンディライド譲りの地力がある。オーナーブリーダーの期待を背に、大物食いを目指す。
4. ロブスタ(Robusta)
- 騎手: Rafael Bejarano
- 調教師: Doug O’Neill
- オッズ: 30-1
- 【寸評】 ダービーは14着と大敗したが、サンフェリペS2着の実績あり。2012年の覇者アイルハヴアナザーを管理した名門オニール厩舎が、得意の舞台で巻き返しを図る。
5. トーキン(Talkin)
- 騎手: Irad Ortiz Jr.
- 調教師: Danny Gargan
- オッズ: 20-1
- 【寸評】 ダービーをスキップしてここに照準。ブルーグラスS3着の実績は上位。フレッシュな状態で臨める強みがあり、名手イラッド・オルティスJr.とのコンビで勝機を探る。
6. チップホンチョ(Chip Honcho)
- 騎手: Jose Ortiz Jr.
- 調教師: Steve Asmussen
- オッズ: 5-1
- 【寸評】 1月のルコムトSで後のダービー馬ゴールデンテンポに先着した実績が光る。先行力があり、粘り強さが持ち味。アスムッセン調教師にとって3度目のプリークネス制覇を狙う一頭。
7. ザヘルウィディド(The Hell We Did)
- 騎手: Luis Saez
- 調教師: Todd Fincher
- オッズ: 15-1
- 【寸評】 父オーセンティック。サンランドパークを13馬身差で圧勝したスピードは本物。前走レキシントンS2着と地力を証明しており、初のG1タイトル奪取へ視界良好。
8. ブルバイザホーンズ(Bull by the Horns)
- 騎手: Micah Husbands
- 調教師: Saffie Joseph Jr.
- オッズ: 30-1
- 【寸評】 3月のラシャウェイS勝利以来、約2ヶ月の間隔を空けての参戦。強豪が集ったファウンテンオブユースSでは敗れたが、休養十分で上位進出の機をうかがう。
9. アイアンオナー(Iron Honor)
- 騎手: Flavien Prat
- 調教師: Chad Brown
- オッズ: 9-2 (※想定1番人気)
- 【寸評】 キャリア4戦と底を見せていない1番人気候補。ゴッサムSで見せた走りは圧巻。前走ウッドメモリアルS(7着)の敗因は明確で、名将チャド・ブラウンが万全の仕上げで臨む。
10. ナポレオンソロ(Napoleon Solo)
- 騎手: Paco Lopez
- 調教師: Chad Summers
- オッズ: 8-1
- 【寸評】 2歳時にG1シャンパーニュSを6馬身半差で制した早熟の天才。今年は5着が続くが、実績はメンバー屈指。復活を期す名門の血が、中距離の舞台で呼び起されるか。
11. コロナデオロ(Corona de Oro)
- 騎手: John Velazquez
- 調教師: Dallas Stewart
- オッズ: 30-1
- 【寸評】 未勝利戦を勝ち上がったばかりの挑戦だが、この舞台を知り尽くした名手ベラスケスを確保。過去に2着2回を誇るスチュワート師が送り出す「不気味な伏兵」。
12. インクレディボルト(Incredibolt)
- 騎手: Jaime Torres
- 調教師: Riley Mott
- オッズ: 5-1
- 備考: (注: サイト上の一部表記で馬名がNapoleon Soloと誤植されている箇所がありますが、見出しはIncrediboltとなっています)
- 【寸評】 バージニアダービーの覇者が追加登録で参戦。ダービーでも6着と掲示板付近まで追い上げた。勢いのあるトーレス騎手とのコンビで、三冠第2戦でのジャイアントキリングを狙う。
13. グレイトホワイト(Great White)
- 騎手: Alex Achard
- 調教師: John Ennis
- オッズ: 15-1
- 【寸評】 ダービー当日にゲート裏で転倒し無念の出走取消。幸い怪我はなく、スライド参戦となった。バタグリアメモリアルSで見せた爆発力が出れば、混戦を断つ力はある。
14. プリティボーイマイア(Pretty Boy Miah)
- 騎手: Ricardo Santana Jr.
- 調教師: Jeremiah Englehart
- オッズ: 15-1
- 【寸評】 重賞初挑戦だが、ブリンカーを装着してから2連勝(計10馬身差以上)。昇り龍の勢いがあり、一気に頂点まで駆け上がる可能性を秘めた魅力的な一頭。

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