香港チャンピオンズデーの3大G1の一つである「FWDチャンピオンズマイル(1600m)」は、アジアのみならず世界のマイラーが集う極めてレベルの高い一戦です 。本記事では、21世紀に誕生したこのレースの歴史、近年の血統トレンド、ラップタイムから見えるレース傾向、そして歴代の名手たちの記録について徹底解説します。
- レースの歴史:新世紀に誕生したマイラーの祭典
- 過去10年の勝ち馬と種牡馬(サイアー)まとめ
- リードセクションタイムによるレース傾向:世界最速のマイル戦
- 勝利ジョッキーのまとめ(2001年以降)
- 2026年 FWD チャンピオンズマイル (G1) 出走馬プロフィール
- 【1】ジャンタルマンタル (JANTAR MANTAR) 🇯🇵
- 【2】ヴォヤージュバブル (VOYAGE BUBBLE) 🇭🇰
- 【3】ドックランズ (DOCKLANDS) 🇬🇧
- 【4】ラッキースワイネス (LUCKY SWEYNESSE) 🇭🇰
- 【5】マイウィッシュ (MY WISH) 🇭🇰
- 【6】レッドライオン (RED LION) 🇭🇰
- 【7】ギャラクシーパッチ (GALAXY PATCH) 🇭🇰
- 【8】シュトラウス (STRAUSS) 🇯🇵
- 【9】キャップフェラ (CAP FERRAT) 🇭🇰
- 【10】インヴィンシブルアイビス (INVINCIBLE IBIS) 🇭🇰
- 【11】サンライトパワー (SUNLIGHT POWER) 🇭🇰
- 【12】チャンチェングローリー (CHANCHENG GLORY) 🇭🇰
- 【13】コパートナープランス (COPARTNER PRANCE) 🇭🇰
- 【14】リトルパラダイス (LITTLE PARADISE) 🇭🇰
レースの歴史:新世紀に誕生したマイラーの祭典
FWDチャンピオンズマイルは、香港の12のG1レースの中で唯一、2000年以降(2001年)に創設された比較的新しい競走です 。創設当初は香港地元馬によるHKG1として実施され、第1回はブライアン・カン厩舎のレッドペッパー(Red Pepper)が制しました 。
2005年からは国際競走となり、賞金総額も800万香港ドルに増額されました 。この年のレースでは、名馬ブリッシュラック(Bullish Luck)が、17連勝中だった僚馬サイレントウィットネス(Silent Witness)を短頭差で破るという、香港競馬史に残る名勝負が繰り広げられました 。その後、2007年に国際G1へと昇格 。2019年からは保険ブランドのFWDが冠スポンサーとなり、2025年には賞金総額が創設時の5倍以上となる2400万香港ドルに達しています 。
また、2025年の「世界のトップ100 G1レース」では41位タイにランクインしており、その競技水準の高さは世界的に認められています 。
過去10年の勝ち馬と種牡馬(サイアー)まとめ
過去10年(2016年〜2025年)の優勝馬と、その父馬(サイアー)のデータは以下の通りです。
| 開催年 | 優勝馬 (生産国) | 父馬 / サイアー (生産国) | 備考 |
| 2025年 | レッドライオン / Red Lion (IRE) | Belardo (IRE) | 89倍の超低評価を覆す勝利 |
| 2024年 | ビューティーエターナル / Beauty Eternal (AUS) | Starspangledbanner (AUS) | ジョン・サイズ厩舎の4勝目 |
| 2023年 | ゴールデンシックスティ / Golden Sixty (AUS) | Medaglia d’Oro (USA) | 同一馬による史上初の3連覇達成 |
| 2022年 | ゴールデンシックスティ / Golden Sixty (AUS) | Medaglia d’Oro (USA) | レースレコードの1分32秒81を記録 |
| 2021年 | ゴールデンシックスティ / Golden Sixty (AUS) | Medaglia d’Oro (USA) | 香港マイルとの同一シーズン連覇 |
| 2020年 | サザンレジェンド / Southern Legend (AUS) | Not A Single Doubt (AUS) | 圧倒的人気のビューティージェネレーションを破る |
| 2019年 | ビューティージェネレーション / Beauty Generation (NZ) | Road To Rock (AUS) | 史上最低オッズの1.05倍で勝利 |
| 2018年 | ビューティージェネレーション / Beauty Generation (NZ) | Road To Rock (AUS) | 1馬身差の快勝 |
| 2017年 | コンテントメント / Contentment (AUS) | Hussonet (USA) | ジョン・サイズ厩舎の3勝目 |
| 2016年 | モーリス / Maurice (JPN) | スクリーンヒーロー / Screen Hero (JPN) | 唯一の日本調教馬による優勝 |
近年のトレンドとして、オーストラリア生産馬の強さが際立っています 。また、ゴールデンシックスティ(Golden Sixty)が記録した史上初の3連覇は、現代の香港マイル戦線における圧倒的な支配力を象徴しています 。
リードセクションタイムによるレース傾向:世界最速のマイル戦
チャンピオンズマイルの最大の特徴は、非常に時計の速い決着になりやすい点です 。シャティン競馬場の芝1600mコースは、スタートから最初のコーナーまでの距離があり、ペースが落ち着きにくい構造になっています。
- 高速決着の傾向: 2022年にゴールデンシックスティが記録した「1分32秒81」は、大会史上最速タイムです 。この年のラップ構成は、最初の400mが24.39秒、次の400m(800m通過)が22.20秒と、中盤に非常に激しいスピードの持続が求められました 。
- 中盤の緩みの少なさ: リードセクションタイム(Lead Sectional Time)を確認すると、多くの年で800mから1200mにかけてのセクションで22秒台から23秒台前半のラップが刻まれており、息の入らない展開になりやすいことがわかります 。
- 逃げ・先行の有利さ: 2025年の優勝馬レッドライオン(Red Lion)は逃げ切り勝ちを収めており、水分を含んだ馬場(Moisture in the ground)であっても、前で粘り込む能力が重要視されます 。一方で、高速馬場ではゴールデンシックスティのような、上がり3ハロンで究極の瞬発力を繰り出す馬が他を圧倒します。
勝つためには、最初の800mを46秒〜47秒台で通過するスピードへの対応力と、最後の直線でも衰えない持久力の双方が不可欠です 。
勝利ジョッキーのまとめ(2001年以降)
このレースで輝かしい成績を収めているジョッキーたちは以下の通りです。
| ジョッキー名 | 勝利数 | 勝利年 |
| ヴィンセント・ホー (Vincent Ho) | 4勝 | 2020, 2021, 2022, 2023 |
| ザック・パートン (Zac Purton) | 3勝 | 2018, 2019, 2024 |
| ブレット・プレブル (Brett Prebble) | 3勝 | 2006, 2009, 2017 |
| ジョアン・モレイラ (Joao Moreira) | 2勝 | 2015, 2016 |
| ウェイチョン・マーウィング (Weichong Marwing) | 2勝 | 2002, 2013 |
| ダレン・ビードマン (Darren Beadman) | 2勝 | 2010, 2011 |
特筆すべきは、香港の地元出身ジョッキーであるヴィンセント・ホー(Vincent Ho)の活躍です 。彼は2020年から2023年にかけて史上初の「4年連続優勝」を達成しており、このレースにおいて最も成功した騎手として歴史に名を刻んでいます 。また、ザック・パートン(Zac Purton)とブレット・プレブル(Brett Prebble)もそれぞれ3勝を挙げており、マイル戦におけるペース判断の正確さが勝利に直結することを示しています 。
2026年 FWD チャンピオンズマイル (G1) 出走馬プロフィール
【1】ジャンタルマンタル (JANTAR MANTAR) 🇯🇵
- レーティング: 121
- 血統: 牡5・Palace Malice産駒 | 陣営: 高野友和厩舎(日本)
- 【短評】世界屈指のマイラー。不完全燃焼の昨冬から逆襲へ 朝日杯FS、NHKマイルC、安田記念、そしてマイルCSとG1・4勝を誇る日本が世界に誇るマイル王。1600m戦は通算7戦5勝と圧倒的な成績を残している。前回の香港遠征(2024年香港マイル)では、終始外々を回らされた上に不利を受け、さらには落鉄も重なるという散々な結果で度外視可能。これまでの好走はすべて良〜稍重馬場(good-to-firm)で、前目につける正攻法の競馬が身上。キャリアの浅い5歳馬だけに、まだまだ上積みも見込める。巻き返し必至。
【2】ヴォヤージュバブル (VOYAGE BUBBLE) 🇭🇰
- レーティング: 121
- 血統: 騸8・Deep Field産駒 | 陣営: R.イウ厩舎(香港)
- 【短評】堂々の三冠馬&香港マイル連覇。自在性と実績は最上位 2024年・2025年と香港マイルを連覇しているタフなマイラー。昨シーズンはスチュワーズC、香港ゴールドC、そしてチャンピオンズ&チャターCを制し、史上2頭目となる香港三冠馬の偉業を達成した。3月の香港ゴールドC(G1・2000m)こそ大敗を喫したが、距離を戻した前走のチェアマンズT(G2)ではラッキースワイネスの3着とキッチリ立て直してきた。逃げても良し、好位で控えても良しの自在性を持ち、馬場状態も全く問わない。死角らしい死角が見当たらない不動の軸候補。
【3】ドックランズ (DOCKLANDS) 🇬🇧
- レーティング: 118
- 血統: 牡6・Massaat産駒 | 陣営: H.ユースタス厩舎(イギリス)
- 【短評】欧州のマイルG1馬。直線一気の末脚は香港の舞台でも不気味 昨年末の香港マイルでヴォヤージュバブルの4着に入って以来の休養明けとなった、3月のドンカスターマイルS(リステッド)を見事な勝利で飾っての参戦。成績にムラはあるものの、2025年にはロイヤルアスコット開催のクイーンアンS(G1)を制覇するなど、その実力は紛れもなくワールドクラス。芝での4勝はすべて直線コースで挙げたものだが、昨年末のシャティンでの好走を見ればコーナーのあるコースも不安なし。基本は後方待機策。馬場を問わず、一発の怖さを秘めている。
【4】ラッキースワイネス (LUCKY SWEYNESSE) 🇭🇰
- レーティング: 118
- 血統: 騸8・Sweynesse産駒 | 陣営: M.マン厩舎(香港)
- 【短評】元絶対的スプリンターがマイルで完全復活。勢い乗る陣営 22/23シーズンの香港チャンピオンスプリンターであり、香港スピードシリーズを完全制覇した伝説的な名馬。今シーズンからマイル路線へ矛先を変えると、スチュワーズC(G1)で周囲を驚かせる2着に好走。そして前走のチェアマンズT(G2)では、粘るマイウィッシュをねじ伏せて遂にマイル重賞初制覇を成し遂げた。かつての絶対的なスピードを活かしつつ、好位で折り合う術を身につけており、完全復活のムードが漂う。馬場状態に不安はない。
【5】マイウィッシュ (MY WISH) 🇭🇰
- レーティング: 117
- 血統: 騸5・Flying Artie産駒 | 陣営: M.ニューナム厩舎(香港)
- 【短評】充実期を迎えた5歳世代の雄。自在な脚質と安定感が光る 昨シーズンの香港クラシックマイルを制し、続く香港ダービーでも僅差の2着に入った実力馬。昨年10月にはセレブレーションC(G3)、シャティントロフィー(G2)と重賞を連勝し本格化をアピールした。前走のチェアマンズT(G2)でも僅差の2着に好走しており、充実一途の勢いがある。先行策から後方待機まで、どんな位置取りからでも競馬ができるセンスの塊。良馬場で最高のパフォーマンスを発揮するタイプだ。
【6】レッドライオン (RED LION) 🇭🇰
- レーティング: 116
- 血統: 騸7・Belardo産駒 | 陣営: J.サイズ厩舎(香港)
- 【短評】昨年の大波乱の主役。雨で渋った馬場になれば特大の一発も 昨年のこのレース(チャンピオンズマイル)で単勝90倍という大番狂わせを演じ、ヴォヤージュバブルを僅差で破ってG1初制覇を飾った古豪。その後、香港マイルでも驚きの3着に食い込んだ。前走のチェアマンズTでは大敗を喫しており状態面の復調がカギとなるが、名将サイズ厩舎だけに立て直してくる可能性は十分。通常は好位からの競馬。良馬場でも走るが、雨の影響を受けた重い馬場になれば、さらにパフォーマンスを上げる潜在能力を秘めている。
【7】ギャラクシーパッチ (GALAXY PATCH) 🇭🇰
- レーティング: 115
- 血統: 騸5・Wandjina産駒 | 陣営: P.ン厩舎(香港)
- 【短評】末脚の切れ味は現役屈指。激流になれば大外急襲の場面も G3を連勝して23/24シーズンの香港最優秀4歳馬に輝いた素質馬。今シーズンもジョッキークラブマイル(G2)を制するなどコンスタントに活躍している。近2走のクイーンズシルバージュビリーC(G1)とチェアマンズT(G2)は共に4着と堅実な走りを見せている。自慢の鋭い瞬発力を引き出すには、ペースが速くなるか、展開の助け(運)が必要な後方待機型。馬場状態は気にしないタイプで、前が崩れる展開になれば一気の撫で切りも。
【8】シュトラウス (STRAUSS) 🇯🇵
- レーティング: 115
- 血統: 牡5・モーリス産駒 | 陣営: 武井亮厩舎(日本)
- 【短評】海外遠征で精神面が成長。タフな馬場と展開なら出番あり 着実に成長を遂げている日本の大器。昨年末はオーストラリアに遠征し、道中で不利を受けながらも後方から勇敢に追い込み6着(ランドウィック競馬場)。今年2月のUAE・アブダビゴールドC(リステッド・1600m)では前目につけ、馬群をこじ開けて見事な勝利を収めた(このレースは格付け以上にハイレベルだった)。好位〜中団からの競馬になりそう。豪州ではソフト馬場、日本でのデビュー戦は不良馬場で圧勝しており、タフな馬場は大歓迎だ。
【9】キャップフェラ (CAP FERRAT) 🇭🇰
- レーティング: 114
- 血統: 騸5・Snitzel産駒 | 陣営: F.ルイ厩舎(香港)
- 【短評】昨年のダービー馬。頓挫明けを叩かれた上積みに期待 2025年のBMW香港ダービー(2000m)を制した輝かしい実績を持つ。クラシックマイル12着、クラシックカップ9着からの劇的な大逆転劇だった。その後、QE2世C(G1)でもタスティエーラの5着と健闘。今シーズンは順調さを欠く時期(頓挫)があったものの、前走のチェアマンズT(1600m)できっちりとレースをまとめ、復調をアピールした。自在性はあるが、ベストフォームを発揮するのは良馬場の時だ。
【10】インヴィンシブルアイビス (INVINCIBLE IBIS) 🇭🇰
- レーティング: 114
- 血統: 騸4・Hellbent産駒 | 陣営: M.ニューナム厩舎(香港)
- 【短評】今年の香港ダービー馬が参戦。自慢の鬼脚がマイルで弾けるか 先月のBMW香港ダービー(2000m)を見事に制し、今年の4歳世代トップの座を不動のものとした新星。その前走となる香港クラシックカップ(1800m)でも、ストーミーグローブの僅差2着に入っている。鋭い瞬発力(ターンオブフット)を最大の武器とする追い込み馬(ホールドアップランナー)で、初の一線級相手のマイル戦でペースに対応できるかがカギ。良〜稍重馬場(good to good-to-firm)で最も力を発揮する。
【11】サンライトパワー (SUNLIGHT POWER) 🇭🇰
- レーティング: 114
- 血統: 騸5・Capitalist産駒 | 陣営: R.イウ厩舎(香港)
- 【短評】大舞台での健闘光る伏兵。鋭い差し脚で上位を窺う 昨年のこのレース(FWDチャンピオンズマイル)でレッドライオンに肉薄する僅差の3着に入り、キャリアハイのパフォーマンスを見せた。今シーズンも7戦して3回馬券圏内を確保するなど堅実。ジョッキークラブマイル(G2)ではギャラクシーパッチの2着、スチュワーズC(G1)でも4着と、一線級相手にも大きく崩れていない。持ち前の鋭い差し脚(ターンオブフット)が活きる展開になれば、馬場状態を問わず上位に食い込む力を持っている。
【12】チャンチェングローリー (CHANCHENG GLORY) 🇭🇰
- レーティング: 113
- 血統: 騸5・Mor Spirit産駒 | 陣営: F.ルイ厩舎(香港)
- 【短評】距離短縮で粘りを発揮か。先行策からしぶとく食い下がる 2025年のセンテナリーヴァーズ(G3・1800m)で重賞初制覇。その後、香港ゴールドC(G1・2000m)でヴォヤージュバブルの3着に入るなど、中距離戦線で存在感を示してきた。昨年は韓国のコリアカップ(ダート1800m)にも遠征し、強豪ディクタオンの2着と健闘。基本は先行(handy)だが、自在性も持ち合わせている。良馬場がベスト。今回はマイルへの距離短縮となるが、持ち前のしぶとさを活かして先行集団から粘り込みを図る。
【13】コパートナープランス (COPARTNER PRANCE) 🇭🇰
- レーティング: 113
- 血統: 騸5・Epaulette産駒 | 陣営: F.ルイ厩舎(香港)
- 【短評】逃げを武器に連勝街道を爆走。自分のペースで行ければ デビューシーズンに破竹の6連勝を飾り、香港競馬界に旋風を巻き起こしたスピード馬。キャリアのハイライトは2025年のプレミアC(G3・1400m)制覇。今シーズンも序盤からセレブレーションC(G3)、シャティントロフィー(G2)と連続2着に好走し安定感を見せた。前走のクイーンズシルバージュビリーC(G1・1400m)では逃げを打ったものの、終盤で失速。今回もハナを主張する可能性が高く、良馬場でマイペースの逃げに持ち込めれば一発がある。
【14】リトルパラダイス (LITTLE PARADISE) 🇭🇰
- レーティング: 111
- 血統: 騸4・Toronado産駒 | 陣営: J.ティン厩舎(香港)
- 【短評】香港クラシックマイル覇者。得意の距離に戻って真価発揮へ 3走前の香港クラシックマイル(1600m)を鮮やかに制した素質馬。その後のクラシックカップ(1800m)で8着、香港ダービー(2000m)で9着と距離延長の壁にぶつかったが、今回は適鞍であるマイルに距離を戻す。クラス3、クラス2を圧倒的な力で勝ち上がってきたシャティン期待の星であり、11戦6勝の好成績を誇る。自在性と鋭い加速力が武器。得意の良〜稍重馬場で、同世代のダービー馬らに一矢報いるか。



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