ホリエモン所有馬「イッテラッシャイ」の中山ダート1800m「1分50秒8」の価値

実業家のホリエモンこと堀江貴文さんがオーナーを務めることで、デビュー前から大きな話題を集めていた3歳馬「イッテラッシャイ」。そのイッテラッシャイが本日、中山競馬場のダート1800m戦で見事に2勝目を挙げたのですが、その価値時計がすさまじいです。

勝ち時計は*「1分50秒8」。

長く競馬を見ている方なら、この中山ダート1800mにおける「1分50秒台」という数字がいかに異次元なものであるか、直感的に理解できるでしょう。しかし、感覚だけで「すごい」と語るのではなく、今回は客観的なデータを用いて、このタイムがいかに歴史的な快挙であるかを説明したいと思います。

Targetを用いて過去の中山ダート1800m(良馬場)の全レースの走破タイムのデータを引っ張り出し、統計学の視点から分析を行いました。
以前にイッテラッシャイの血統も調べているのでこちらもどうぞ→https://keiba-rx.com/hyacinth-stakes-itterasshai-pedigree-analysis/

■ 全年齢のデータから見る「1分50秒8」の立ち位置

まずは、年齢を問わず全世代の競走馬が走ったデータ(3,327件)全体の中で、今回のタイムがどの程度のレベルなのかを確認してみます。

  • 全体データ件数:3,327件
  • 全体の平均タイム:1分55秒5
  • 全体の中央値:1分55秒5

平均値と中央値(データを順番に並べた時にちょうど真ん中にくる値)が「1分55秒5」で完全に一致しているということは、このデータが綺麗な山型(正規分布)を描いていることを示しています。つまり、一部の極端なタイムに引っ張られていない、非常に信頼できるデータだということです。

この全体データの中で、イッテラッシャイの「1分50秒8」というタイムを、受験などでおなじみの(ホリエモンの好きそうな)「偏差値」に換算してみましょう。競馬のタイムは「数値が小さい(速い)ほど優秀」であるため、平均より速いほど偏差値が高くなるように計算します。

その結果、全体におけるイッテラッシャイの偏差値は「75.3」と算出されました。

偏差値75というのは、統計学的に言うと「上位約0.6%」に相当します。1000頭走ってトップ6に入るかどうかという、超エリート級の数字です。全年齢、つまり力の完成した古馬(4歳や5歳以上の馬)たちの記録をすべて含めても、歴代トップクラスの時計であることがわかります。

■ 3歳馬に限定すると偏差値は驚異の「80超え」

しかし、本当に驚くべきはここからです。イッテラッシャイはまだ成長途上の「3歳馬」です。そこで今度は、データを「3歳馬のみ(1,720件)」に絞って分析してみました。

未勝利戦なども多く含まれる3歳戦では、当然ながら全体よりも時計がかかる傾向にあります。

  • 3歳馬のデータ件数:1,720件
  • 3歳馬の平均タイム:1分56秒2
  • 3歳馬の中央値:1分56秒3

全体平均と比べると、約0.7秒ほど遅くなっています。この「3歳馬の基準」に当てはめて、イッテラッシャイの1分50秒8を再び偏差値換算してみると……

なんと、「偏差値 80.8」という数値になりました。

偏差値80というのは、上位0.1%の世界です。学校のテストで例えるなら、平均点が30点くらいの超難問テストで、一人だけ100点満点を叩き出したような異常事態です。3歳春の時点でこの時計で走り切るスピードとスタミナは、まさに「規格外」の一言に尽きます。ホリエモンの東大偏差値よりも高いかもしれません。

■ あの「アグネスデジタル」に並ぶ歴史的証明

「偏差値80.8」と言われてもピンとこないかもしれませんが、歴史上の名馬と比較するとその凄さが明確になります。過去の膨大なデータの中で、中山ダート1800m(良馬場)を「1分50秒8より速く走った3歳馬」を検索してみたところ、ヒットしたのはたったの「2頭」しかいませんでした。

  1. グラスエイコウオー(1分50秒3) – 2001年 師走S
  2. アグネスデジタル(1分50秒7) – 2000年 ユニコーンS(G3)

グラスエイコウオーは、3歳ながら古馬相手のオープン特別でこの大記録を出しました。そしてもう1頭は、のちに天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップ、フェブラリーステークス、香港カップなど、芝とダートを問わずG1競走を6勝も挙げた歴史的スーパーホース、あのアグネスデジタルです。

イッテラッシャイが出したタイムは、アグネスデジタルが3歳時に出した伝説のタイムにわずか0.1秒差まで迫る、歴代3位の大記録なのです。全年齢(全3,327レース)を含めても、歴代で11位タイという上位ランキングに入ってきます。

■ 馬場状態(トラックバイアス)の冷静な分析

ただし、競馬を分析する上で「馬場状態」というフィルターを忘れてはいけません。公式発表は「良馬場」であっても、日によって砂の締まり具合が異なり、時計の出やすさが大きく変わるからです。

客観性を保つために、同日に行われた「2勝クラス」のレース結果も分析しました。この日の2勝クラスの勝ち時計は「1分53秒0」でした。

過去の2勝クラス(旧1000万下)の平均タイムは「1分54秒2」です。つまり、この日の2勝クラスも平均より1.2秒も速い時計で決着しており、このタイムの偏差値も「63.7(上位約6%)」と非常に優秀なものでした。

このデータが意味するのは、「今日の馬場は全体的に時計が出やすい(スピードが出やすい)状態だった」という事実です。イッテラッシャイのタイムも、この「高速馬場の恩恵」を少なからず受けていると見るのが冷静な視点でしょう。

しかし、馬場の恩恵(例えば1秒〜1.5秒分)を差し引いて考えたとしても、3歳馬がこの時期に1分51秒〜52秒台相当のスピードを経験し、最後までバテずに押し切ったという事実は揺るぎません。馬場が速いからといって、どの馬でも1分50秒台を出せるわけでは決してないからです。

■ 終わりに

データが示す通り、イッテラッシャイはアグネスデジタルが歩んだような輝かしいG1ロードへ繋がる、特大のポテンシャルを秘めています。ホリエモンオーナーの話題性だけでなく、確かな実力と歴史的なスピードを持ったこの馬の次走が、今から楽しみでなりません。

「イッテラッシャイ」——。

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